Recording in RWANDA ★ 落ち込むこともあるけれど、わたしは元気です!

2009年11月30日

やっかいごとに巻き込まれる


立てなくなった牛がいるとのことで往診に行きました。
妊娠八ヶ月。まだ一産しかしてない若い牛。
食欲もあるし、しっぽも弱々しいながら動かせる。体表の温度も正常。
これは立てるな、と思いさっそく吊起(牛を上から吊り下げて起立を助けること)を試みました。
日本だったら牛舎が丈夫なので、梁にチェーンブロックを固定してそれで牛を引き上げるのですが
こちらの手作り牛舎は、牛の重みで崩壊してしまいそう。
何本か木材を運んできてもらって、近所の人たちにも集まってもらって、
14人のマンパワーで牛を持ち上げ、布とロープで作った即席ベルトで牛の体を吊り下げました。
でも足は四本ともブラーンとしたまま。
脊椎をやっちゃってるかなぁと思いつつも
以前、毎日吊起して10日目にようやく自力で歩けるようになった症例を経験したことがあるので
この作業を毎日続けてみてくれと頼みました。
牛は吊り下げられた状態で元気よくエサを食べてました。

その5時間後。
「Yarapfuye!(牛が死んだ!)」という電話。
えぇ?
まったく納得がいかず、検死に行こうとしたけど
夜間外出は禁じられているので
翌朝その地域の獣医技術者が検死するのを待つことに。
検死の結果、脊髄断裂とのこと。
おなかの中にいたのは双子の赤ちゃん。
とても死ぬような状態ではなかったので
なにかややこしい事情でもあるのかもしれない、と思いつつ
飼い主からの依頼で診断書を書くことに。

診断書を取りに来た飼い主の言葉を聞いてびっくり。
飼い主いわく、例の牛は使用人が棒で殴って背骨を折ったに違いない、とのこと。
これから警察に届けてその使用人を逮捕してもらうから、
殴られて殺されたと診断書に書いてくれ、と。
わたしは獣医師であって、占い師でも探偵でもないので、
とにかく自分の目で見たこと以外は書けない、ということを言って帰ってもらいました。
翌日、今度は警察からの書類提出請求書を持ってやってきて
「例の牛が自分で死んだのか、殺されたのか、レポートを提出せよ」と言うではないですか。
なんかおおごとになってきたので
配属先のダイレクターに処理してもらうことになりました。
実はこの飼い主、大金持ちの国会議員なのです。
「これはわたしに対する当て付けだ!次はわたしの命が狙われるんだ!」と大騒ぎ。
「なんでそう思うんですか?わたしには理解できないです」と聞くと、
「君は1994年にこの国で何が起きたか知らないのかね?人々は今も殺しあっているんだよ!」
目を見開いてそう話す飼い主を見ていると、
なんだかとても悲しい気分になりました。

6 件のコメント:

  1. すごい大変なことになっていますね!!

    とても日本では考えられない。
    真相も知りたいですけど、危険な臭いがぷんぷんしますね・・・

    本当にご自分の身体だけはお気をつけてください!!

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  2. 何が問題で,最優先すべきことは何かを
    見失ってしまいそうなことが,よく起こりますね。

    日本の,のどかな田舎都市で育った人には
    理解しがたい事情があるのですね。やはり。

    またもやかわいそうな牛さんでした。

    一頭でも多く,本来の牛生を全うしてほしいけど,
    たぶん時間がかかると思います。焦らないで下さい。

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  3. >y243
    でしょう?危険な雰囲気だよね。
    自分の意思に反する診断書を書かされそうになるケースは
    日本でも何度か経験したけど
    やっぱり一度そういうことやっちゃうと
    もう技術屋じゃなくなっちゃう。
    幸い、われわれは雇われの身だから
    やっかいな雰囲気を察したらそっこーボスに相談だ!

    >324k
    ほんと、結局いちばん迷惑こうむったのは牛だよ。
    いつもそうなんだけど。
    それにしても、
    お金の話だとか、殺すだの殺されるだのだとか、
    そういうのにはどうしても嫌悪感を感じてしまう。。
    道徳心にかなった「思想の選択」ができるようになるには
    それなりの経済的余裕がまぁ必要なんだろうなぁと思いつつ。

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  4. 難しいですね
    ジェノサイドの事があるから
    人を疑ってしまって
    でも表にださないだけで
    信じるは家族だけって感じですかね

    牛も残念でしたね
    まぁ真相はわからないにしても
    使用人かもしれないし
    kiriが前例があったかもしれないが
    日本と違うから耐えられなかったかもしれない

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  5. 牛さんのため、国民のためを思えばいろいろと口を出したくなることもあるのでしょうが、
    こんなことブログに書いて、影響はないの?
    それも心配になったり・・・
    「衣食足りて礼節を知る」なのかもしれませんが、
    衣食足りてる日本でも、おかしげな事件があります。
    油断しないように。

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  6. >zizi
    そうだね。
    特に社会的しょに上の地位にいる人は
    よくこういうことを言うんだよね。
    友達からも、「昔いっしょに住んでた同僚が
    枕元に包丁を隠してるのを見つけたので
    手切れ金払って出て行ってもらった」だとか
    そういうぶっそうな話を聞かされたことがある。

    >324K
    うーん、たぶん大丈夫だと思う。
    心配ありがとう。
    気をつけます。
    あまりにも自分の価値観では量りきれないできごとが続くと
    「もしかして自分のほうが異常なのか?」って思えてくることもあるよ。

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