ここルワンダに数えるくらいしかいないJICA関係者以外の日本人。
その一人である佐々木和之さんのプロジェクトを訪ねました。
佐々木さんはエチオピアで10年以上もの間、
国際飢餓対策機構のミッションで農業指導をされていました。
そこで、せっかくの農村開発の成果が
戦火によって再びめちゃくちゃになるのを目の当たりにした経験から、
イギリスの大学で平和構築について学び始め、
大学院修了後、ルワンダにて紛争後の和解を進める仕事をされています。
ジェノサイドで傷害や殺人の罪に問われた人は35万人。
そのすべてを拘留し続ける経済的余裕のないルワンダ政府は、
自分の罪を認めた虐殺犯に関しては、刑期を短くし、
道路工事や土地開墾などの公益労働に従事させるという刑を適用しました。
(ジェノサイドを首謀し、民衆を扇動した人たちを除く)
でも、人里離れた山の中で「罰」としての公益労働に従事することで
本当に虐殺加害者の心に償いの気持ちは生まれるのだろうか?
一方、虐殺被害者はそれで本当に心の傷や、憎しみから開放されるのだろうか?
そんな思いから、佐々木さんは
ルワンダの牧師さんが立ち上げたNGOの職員として
「償いの家造りプロジェクト」というのを2005年から始めました。
それは、公益労働刑に処された虐殺加害者が、被害者の家族のために家を建てるプロジェクト。
“加害者を罰すること”以上に、“被害者が回復すること”を重視する考え方です。
“加害者を罰すること”以上に、“被害者が回復すること”を重視する考え方です。
加害者が罪の自覚を深め、出来る限りの「償い」に取り組む中で、
両者の関係修復を目指すのです。
すごいなと思ったのは、家造りにとりかかる前に実施される講習会。
グループカウンセリングなどである程度精神的に回復した被害者女性が
虐殺加害者の男性たちに、
自分の体験や今も続いている苦しみについて語り、
それ聞き、事実を真摯に受け止めることで、
彼らが虐殺に加担してしまった者の責任として、
誠意を持って事実を告白し、謝罪し、償いをする動機付けをするのです。
さらにすごいなと思ったのは、
刑期を終えた「家造りOBたち」に対しても、引き続き講習会を実施していること。
そしてその中で「家造りOBたち」が
「今後もボランティアとして、被害者家族のための家造りを続けていきたい」
と申し出てきたというから、ますますびっくりです。
実際に、元受刑者グループによる自発的な家造りは始まっています。
家造りの現場。
みんな真剣な表情で、黙々とスコップを動かし、セメントを運んでいました。
みんな真剣な表情で、黙々とスコップを動かし、セメントを運んでいました。
(家造りの資材は日本の支援団体からの援助で購入されています。)
この日はずいぶん暑くて、木陰で話をしてくれた受刑者の男性は
作業でかいた汗を拭きながら、
「罪を告白するまではずっと苦しかった。
この家造りは自分でしたいと思ってやっていることなんだ。
だから今の自分の心はとても平和なんだ」
とにこやかに語っていました。
わたしが想像していた「虐殺加害者」とまったく違う、穏やかで堂々とした姿。
家造りプロジェクトは、家を受け取る被害者の心の回復だけでなく、
家造りプロジェクトは、家を受け取る被害者の心の回復だけでなく、
参加する受刑者の心の回復にも役立っているのかもしれません。
自分がナタを振り下ろした相手が
実は自分や自分の家族と同じように、話し、食べ、笑い、泣く、
そういう「生身の人間」だったのだ、ということ。
自分の家族を殺し、自分にこんなひどいことをした相手も
実は自らの罪の意識に苦しむ「生身の人間」だったのだ、ということ。
罪を認めて、罰を受ければ終わり、というのではない、
この小さな国で、虐殺加害者と被害者が共に生きていくための
真の和解と共生のための取り組みは
これからも続いていきます。
この小さな国で、虐殺加害者と被害者が共に生きていくための
真の和解と共生のための取り組みは
これからも続いていきます。