Recording in RWANDA ★ 落ち込むこともあるけれど、わたしは元気です!

2010年11月25日

あれよあれよと

なぜかよくわからないんですが、
イロイロといい方向に進み始めました。


初めての受精卵移植を終え、ほっと一息、と思っていたら、

同僚のヴィンセントが今までにないやる気を出していて
なんと自主的に受精卵移植の練習をしたいと言い出し、
週末の朝から、練習に付き合わされる始末。


朝8時集合の予定だったのに、
当日の朝早く電話してきて、「やっぱり7時半集合にしよう!」
と、これまで必ず30分は遅刻してきた人とは思えない豹変っぷり。

なんか変な薬でも飲んだんじゃないかと心配になってしまうほどでした。

雨が降ってきたから中に入ろうと言ってもやめようとしないヴィンセント。



ついでに
「どうせまた読んでくれないんだろうなー」 と思いつつ
こないだやった初めての受精卵移植についての報告書を
テンション低めで提出したところ、
翌朝驚くべき展開が!!

わたしのオフィスの内線が珍しく鳴り、
「トップがユミを呼んでる」とのこと。

慌てて行ってみると、
「報告書に、スタッフのさらなる練習のために牛が必要と書いてあるが
何頭必要なんだ?」

えええー!報告書読んだのですかアナタ!
嬉しくてドキドキしつつ、

「上司が15頭の牛を購入する方向で入札の準備をしている聞いています」
と答えると、

「それじゃ何ヶ月もかかるね。来週の月曜までに牛を用意しよう。
明日か明後日にでも東部州に出張して牛を選んできなさい。」

!?
トップもなんか変な薬を飲んだんじゃないのか・・・?と
かなり疑心暗鬼になりつつ、

とりあえず明日、同僚のクレアと二人で牛選びの旅に行ってきまーす!



ケニアに研修に行った隊員が買ってきてくれたイクラ。
軍艦巻きにしたら卒倒するおいしさでした。
サーモンも納豆もおいしかった・・・
進んでる国はいいなぁぁー!

2010年11月24日

一歩踏み出した!

もう2週間くらい前のことになってしまいますが、

ついに!
受精卵移植、やりました!

受精卵移植というのは、
めっちゃ優秀なお母さん牛の娘がたくさん欲しい、というときにやる技術です。

まず、めっちゃ優秀なお母さんを選びます。
そのめっちゃ優秀なお母さんに一週間くらいかけてホルモン剤を打って
通常、一回に一個しか排卵しないところを、たくさん排卵するようにさせます。

そのあと、そのめっちゃ優秀なお母さんに、めっちゃ優秀なお父さんの精液を使って授精します。
すると、めっちゃ優秀なお母さんのお腹には、
めっちゃ優秀なお父さんとの子供(受精卵)がたくさんできます。

これを放っておくと、五つ子ちゃんとか、十つ子ちゃんとかになるわけですが、
お母さんは一度に一頭の子供しか産めないので、
子宮の中を漂ってるたくさんの子供たちをいったん取り出して、
それを妊娠してない他のお母さんたちのお腹に、ひとつずつ移殖します。
つまり借り腹ですね。

うまくいけば、約10ヵ月後には、それぞれの借り腹から、
めっちゃ優秀なお母さんの子供が何頭も産まれる、というわけです。

ルワンダでは初めての試み。

今回はまったく自信がなかったので
北部州の獣医大学に配属の獣医隊員、牛ノ濱くんにも助っ人に来てもらいました。

受精卵がいくつ取り出せるかは、技術者の腕と、牛のコンディションしだいで、
ベテランがやっても1個も見つからないときがあるので、
いきなり5個も10個も期待するのではなく、
とりあえず1個でも見つかればいいな~くらいの気持ちで。

まずは同僚に作業の流れを体験してほしい。
そして、できれば、「ほら、これが受精卵だよ!」って見せてあげたい!
とにかくやってみるべし!

お母さん牛に麻酔して、子宮にカテーテルを入れていきます。
お母さん大暴れ。。。大苦戦であります^^;
カテーテルがうまく入ったら、
そのカテーテルを通してこの特別な液体を子宮の中に注入します。
で、注入したと思ったらすぐにその液体を回収します。

そう、この回収された液体の中に
もしかしたら受精卵がプカプカ浮かんでる(かも!)というわけです。
この作業を何回かくりかえします。

子宮を通って回収された液体は
とても目の細かいフィルターを通してから廃棄されます。
うまくいけばこのフィルターに受精卵がひっかかってる・・・はず!

さっそく、フィルターにひっかかったものを
顕微鏡で検査します。
受精卵・・・受精卵・・・

・・・・・・

あったぁぁぁぁー!!!
感動の一個目、発見!
すっかり疲れて隣の部屋で牛乳を飲んでる同僚たちを呼びに行きました。
ほら!これが受精卵だよ!!

同僚たちも静かに感動しているのが伝わってきます。
「ゆみ、受精卵はこんな感じに見えたぞ・・・」と絵を描き始めるヴィンセント、
「自分も受精卵見つけたい!」と顕微鏡の席を陣取って
すでに検査済みの液体をにらむクロード。


そう、この瞬間のためにわたしはずっと準備してきんだ・・・(感動の嵐)
感慨深く牛乳を飲みつつ、
回収液は全部検査したから、たぶんもう新たな受精卵は見つからないだろう、
雨も降ってきたし早く帰りたいなー・・・などと考えていたら、


「もういっこ受精卵見つけたーー!」とクロードが言うではありませんか。
顕微鏡をのぞくと、ほんとにもういっこ見つけてました。
受精卵がまだ残ってたことにもびっくりだけど、
それより、粘液やら細かいゴミやらが浮かぶ液体の中で
クロードが自分でちゃんと受精卵を識別できたことに超びっくり。

発見された2個の受精卵はまぁまぁの品質でしたが、
とりあえず、準備してある5頭の借り腹のうちの2頭に、一個ずつ移殖しました。
残りの3頭には、カナダ産の凍結受精卵を解凍して移植しました。

来月、クリスマス前に妊娠鑑定をする予定です。
一頭でも妊娠してくれれば、同僚のモチベーションも上がるというもの。
いいクリスマスが迎えられるように、どうかどうか妊娠してください!!!
祈るような50日間の始まりです。

2010年11月5日

やってみるしかない(後編)

(つづき)
ある日、ものすごく久しぶりにダイレクタージェネラルの車を発見!

つ、ついに姿を現した!!


走り寄って、ウィーンと閉まりつつある窓をガシッと押さえ、

私 「一日も早く、試験に入りたいんです!スタッフの練習に使う牛を用意してください!」

ダ 「ISAR(国営試験場)でやればいいじゃないか」

私 「以前あそこで準備してたら、ISARが余計な条件をつけてきたからこの技術協定はなかったことにしろ、と突然おっしゃったじゃないですか。」

ダ 「じゃあ受精卵移植やりたがってるそのへんの農家でやればいいじゃないか」

私 「まだ一回もやったことのないスタッフがいきなり成功するわけがないです!今は一般向けのサービスを始めるには早すぎます。」

ダ 「君が移殖すればいいじゃないか」

私 「それじゃ意味がないんです。だから数年前にイスラエルの技術者を呼んでやったときは・・・ナンチャラカンチャラ・・・」


ダ 「じゃあうち(RARDA)のニャガタレ牧場でやればいいじゃないか」


私 「その牧場で準備を進めていたら、急に、ここの牛は大統領の所有物だから試験に使うなんてだめだって言われて、それであなたからの決定を待っているんです」


ダ 「あーわかったわかった!牛を用意する!君のプロジェクト用の牛だ!」

そ・し・て・・・



ついに念願の牛を10頭購入する入札の手続きが始まりました。
これまでの経験から、この手続きには半年くらいかかると思いますが・・・
願わくば、わたしがルワンダにいるうちに牛がわたしたちのもとに届きますように。

ついでに、上司から紹介されたルワンダ軍の幹部、ミスタームヒルガに会いに行き、
受精卵移植について説明し、
今はまだ成功率は未知数だけど、この技術がこの国に根付くように努力するので、
その人が所有する牧場の牛をスタッフの練習用に貸してもらえないだろうか、
と交渉したところ、
最後には快諾してくれました。

先月からこの農場に通いながら、
妊娠してない牛を片っ端から検査し、
選抜した牛のコンディションを整えてきました。


そして先々週は、6日間、12時間おきに注射を打ちに通いました。
受精卵を取り出す側の牛に、たくさん排卵させる注射です。

特に病気の治療というわけではないので
日本だと、農場の従業員に頼んで打ってもらったりするのが普通なのですが、
決まった時間に予定通りに仕事をこなすことが大の苦手のルワンダ人に
この12時間おきの注射を依頼するのはやや勇気がいることで、
同僚たちも「絶対じぶんたちでやったほうがいい」と言うので、
じゃあちゃんと朝6時と夕方6時、時間通りに来てね、と約束。
まぁ2回ほどすっぽかされましたが(笑)、
それでも予想以上にがんばってくれた同僚たち。

他のミッションも任されている忙しい彼らのスケジュールをどうにか合わせ、
3回の講義も実施しました。
屠場(食肉解体場)から買ってきた子宮を使って、
丸一日、移殖器具を子宮に通す練習。

経験のないまま学歴だけでここまで来た人たちなので
びっくりするくらい下手なんですが、
なぜかとても前向きです。

カテーテルから内芯が抜けて飛び出していることに気づかず子宮を刺していたときも
「この練習でこの失敗をしておいてよかったよ!」と超ポジティブ、

帰り際、立ちっぱなしでヘトヘトになったわたしに
「ゆみ、がんばりましょう!わたしたちは絶対成功する気がするわ!」と
これまたポジティブ。

なんでこんなに前向きなのか、
その自信はどこからくるのか、もうさっぱりわかりませんが、
とにかくやってみるしかありません。


いよいよ週明けの月曜日、
ホルモン処置した2頭の牛のお腹から実際に受精卵を取り出し、
他の5頭の牛のお腹に移殖します。

移殖する受精卵がちゃんと受胎してくれるかとても不安ですが、
それ以前に、
ちゃんと時間通りスタッフが来てくれるか、
牧場のカウボーイたちに頼んで作ってもらってる牛を固定する枠が当日までにできあがるか、
当日停電して顕微鏡が使えないという事態に陥らないか(可能性はとても高い)、
心配の種はつきません・・・。

やってみるしかない(前編)

ここへ来て一年間、
3歩進んで2歩下がる(たまに3歩下がる)感じだったわたしのプロジェクト。
どうにかこうにか、
実地試験にこぎつけそうなところまできました!

受精卵移植の技術導入、というのがわたしのミッションなのですが、
技術と道具があっても、
じゃあどこのどの牛で始めましょう、っていうのが決まらず
あちこちで着手しては頓挫する、というのを繰り返してきました。



今度こそ!という意気込みでトライしたのが、
RARDA(わたしの配属先)が所有する牧場。

イニャンボという大きな大きな角を持つ在来種の牛が
どれがどれとも記録されないままに自由奔放に放牧されているところで、
まずはその200頭ほどの牛たちに
耳標(ピアスみたいなので耳に名札をつける)をつける作業からスタート。

どこまでが牧場かさっぱりわからない広大な土地に散在している牛たちを
カウボーイたちが上手に一箇所に集めてくれた・・・のはいいけど・・・

こんなにたくさん、どうしよう?
しかもすごい角・・・


ハーイ、みなさん枠に入ってくださーい!

牛をロープで固定すると牛の力で枠が壊れるので、
カウボーイたちが力ずくで角を押さえて固定します。

なんせこれまでずっと野生チックな生活をしてきた牛たちなので
人間につかまったら殺されると思って、もう大暴れ。

それでも、首都から3時間もかかるこの牧場に何日も通って
牛をいくつかの群に分けることも決まり、
ようやく耳標つけも終わりそうだぞ、というころ、
これまで幾度となく経験した、「突然の終了宣言」。

今まで誰の指示も受けずに自由気ままに牛を追い、乳をしぼり、
その乳を売っては小銭を稼いでいたカウボーイたちが
子牛と親牛を分けろだの、お乳の量を記録しろだの、
メンドクサイ仕事が増えたことを不服に思い、
謀反を起こしたのです。
そのカウボーイからの真偽入り混じった訴えを真に受けたうちのトップが
この牧場での試験中止を宣言・・・またふりだしに戻ります。

さぁ、次の候補地を決めなければ!と気持ちを切り替えたところで、
あろうことか、配属先のトップ(ダイレクタージェネラル)が突然の休暇に入ります。
彼がいつ休暇から戻るか、秘書を含めて誰ひとり知らない、という信じられない状態で、
あらゆる決定が先送り。

「早く何らかの実績を出せ」というプレッシャーだけがのしかかる日々。。。