Recording in RWANDA ★ 落ち込むこともあるけれど、わたしは元気です!

2011年2月15日

すごく微妙

ちょっと前のことになるけど、
去年の11月に同僚たちが初めて練習で移植した受精卵は
残念ながら5頭とも受胎しませんでした。

本当は受精卵の入っていないダミーのストローを使って
練習用の安い牛で何度か練習した上でトライすべきなのですが、
苦労して準備した練習の機会はことごとくとんでもない理由でキャンセルになり、
突然降って沸いように訪れた実地練習の機会、
それがこの牧場での「いきなり本番!」の移植だったのです。
・・・当然の結果かもしれません。

しかし、この牧場は実験牧場でもなんでもなく、個人経営の牧場なので、
このまま妊娠していない牛たちをほったらかしにするわけにはいかず、
オーナーさんと話し合って、
フォローアップとしてもう一度、3頭の牛たちに移植を行うことになりました。

一頭はルワンダ人同僚が、2頭はわたしが移植しました。
本当は全部ルワンダ人同僚にさせてあげたかったんだけど、、
「今回は練習より成功率優先!」というボスからの命令があったので、しかたなく。

で、3頭の中の最後の牛に移植してから2ヶ月ほど経過したので、
さっそく昨日、同僚と妊娠鑑定に行きました。

ガタボコの土の道をゆっくり車で登ったり降りたりして、ようやく牧場に到着。
キガリは首都だけど、ちょっとメインロードをはずれるとすぐに赤土の道が現れます。

初めてこの牧場に来たときに案内してくれた、牧場チーフのルシェマが
3ヶ月の謹慎を終えて牧場に復帰していました。
これはありがたい!
(なんで謹慎処分を食らっていたかは不明ですが)
どの牛が誰、どの牛が妊娠何ヶ月、というのをはっきりと記憶しているのは
このルシェマだけだったのです。
彼は文盲ですが、牛の生態について非常によく理解していて、牛の扱い方も素晴らしく、
このルシェマがいたからこそ、
わたしはこの牧場でトライアルを始めることを決心したくらいです。
ところがわたしたちが計画をスタートさせたとたん彼は謹慎処分となり、
ルシェマ不在の状態で受精卵移植を実施せざるをえないわたしは
ものすごく不安でした。

実際、彼がいなくてとても大変でした。
他の使用人たちは、牛を識別できないくせに、牛を平気で殴ったり蹴ったりするし、
どの牛が妊娠していて、どの牛がいつ発情したか、という大事な情報を
一切覚えることができないのです。

「ルシェマひさしぶり!帰ってきたんだね!うれしいよ!
今日はウムチョと、イニェラミヒゴと、マンジ(牛の名前)の妊娠鑑定をしたいんだけど」

「帰ってこれて僕もうれしい。
ウムチョとイニェラミヒゴとマンジか・・・、あぁ、ウムチョは先週、流産したよ」

ほら、どの牛が誰、ってすぐわかるし、それぞれの牛のことが全部頭に入ってる。
さすがルシェマです。

・・・え?っていうか流産!?

がーん・・・
だけど、ということは、いちおう妊娠はしたんだ・・・。
一歩前進。
だけど流産とは・・・残念です。

あとの2頭は?と聞くと、すぐに「こっちだ」と案内してくれました。
他の使用人たちだったら、この「牛を探す」作業だけで30分かかったんだよなー。

さっそくイニェラミヒゴをチェック。
妊娠してる!!
でも妊娠81日にしては子宮がちょっと小さすぎる・・・妊娠40~50日くらいの大きさ。
なんで??

もう一頭、マンジもチェック。
やった、これも妊娠してる!!
こっちは妊娠78日なんだけど、それ相応の子宮。

しかしなぜにイニェラミヒゴの妊娠日数と子宮の大きさが合わないのだ?

もしかして、使用人たち、勝手にこの牛たちをオス牛と一緒にしたのかも!?
通常、メス牛が発情したら、ふだん隔離しているオス牛を連れてきて
そのメス牛と自然交配させるため、数時間一緒にします。
「でもこの受精卵移植を受けた牛は、オス牛と一緒にしたらだめだよ!
お父さんが誰だかわからなくなるからね!」
って言っておいたのに・・・

わたしの予想。
想定していたより子宮のサイズが小さいイニェラミヒゴは、
たぶん受精卵移植では妊娠しなかったんでしょう。
その5週間後くらいに自然に発情したときに、使用人たちがオス牛を連れて来て、
それによって妊娠したんじゃなかな。
そうすると計算が合います。

「オス牛と一緒にした牛はどれとどれ?」
と聞いても、使用人たちの答えはバラバラ。
さすがのルシェマも先週復帰したばかりで、当時のことは知りません。
ルシェマの後釜として新しく雇われたチーフは、
字は書けるけど牛を識別できないし、大事なことは記録していない。

だめだこりゃー!
せっかく妊娠してるけど、
これじゃ受精卵移植で妊娠したんだか、オス牛が乗っかって妊娠したんだか、
証明のしようがありません。

ルシェマが謹慎になってなかったら、
こんないいかげんな結果にはならずに済んだのに・・・。
うーーっ!!悔しすぎる!!
マンジにはジャージー牛の受精卵を移植したので
今年の秋にジャージー牛が生まれたら、移植で妊娠したってわかるけど、
イニェラミヒゴに移植したのはホルスタイン牛の受精卵。
受精卵で妊娠したとしても、オス牛によって妊娠したとしても、
どっちみち白黒もようの子が生まれてくるから、どっちかわかんない。
遺伝子検査は・・・もちろんここでは無理。


運転手が「そろそろ子供たちを学校に迎えに行かないといけない」と言うので
とりあえず牧場をあとにしました。
うーん・・・どうしたものか・・・
車の中でもモヤモヤ・・・

牧場からの帰りに小学校に寄って、子供たちを拾いました。
運転手の子供(真ん中)とそのお友達。
ピカピカの小学一年生です。
今日ようやく制服が支給されたらしく、初めての制服を着て、ごきげんです!
お父さんも、
「こりゃーすごい!まるで大人みたいだぞ!うれしいか?そうかそうか!
週末は写真屋さんに言って写真をとろうな!」
と大興奮でした。
この運転手のこんなに嬉しそうな顔、初めて見たよ。
子供が6人いても、ひとりひとりをこんなにかわいがるルワンダ人。
なんかすごくいいな、とあったかい気持ちになりました。

4 件のコメント:

  1. 本当に「微妙」な気持ちやね~。
    それにしてもルシェマって賢いんだね。
    マンジが出産まですると、初の成功例となって
    大きな一歩になるじゃん。
    kiriが帰国した後出産なのかな?

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  2. ほんとにルシェマはすごいね。ルワンダではなかなかレアな存在なのかな。
    マンジとイニェラミヒゴなんて言いにくい名前・・・
    ひとまず2頭とも無事に出産してくれたらいいね。
    子供たちの制服、大阪の食い倒れ人形チックだね。あれ?こんな感じじゃなかったっけ?子供ってかわいいのぅ。

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  3. 日本流に考えると「ホント微妙」だね。
    でも,ルワンダではちっとも珍しくない状況じゃないかな。
    むしろ,ルシェマの職人芸に,獣医の知識と技術が加算され,
    今までは希望でしかなかったことが,現実になるのではないでしょうかね。
    失敗には学べばいいし・・・。
    神様は無駄なことはなさらない,ですよ。
    最後まで真摯に,誠実に,仕事してください。

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  4. >司
    マンジが何色の子供を産むか気になるところだけど
    出産予定は今年の9月。
    そのころわたしはどこで何をしているんだろう・・・

    >tomobo-
    たぶん、昔から牛飼いの使用人をしていた人は、こういう特別な記憶力を持っているんだと思う。
    国の牧場にいるハーズマンも、150頭くらいの牛を全部識別してたもん。
    それにしても・・・食い倒れ人形とは言い得て妙!!
    ほんとだね~^^

    >324k
    そうだね、そうだよね・・・。
    次にやるのは群れごとにちゃんとした管理人がいる国の牧場なので大丈夫なはず。
    外人がやってきて高度な技術を披露して帰っていく、っていうんじゃなくて、
    ルワンダ人が自分たちでできるようになる、っていうのにこだわって、ノロノロとやっていこうと思う。

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