Recording in RWANDA ★ 落ち込むこともあるけれど、わたしは元気です!

2010年3月25日

メモリアル

ルワンダ各地にある虐殺記念館(ジェノサイドメモリアル)。
実際に行ったことがあるのは、
その中でもパネル展示が並ぶ博物館のようなところだけで、
今回のように、実際に虐殺の現場をそのまま残してあるようなところに行くのは初めてでした。

ンタラマの教会とニャマタの教会を訪れました。
ジェノサイドサバイバー(虐殺生存者)が
当時のことを話しながら案内してくれます。

これらの教会があるブゲセラという県は
もともと居住地には向かない深い森で、
フツ族による圧迫でツチ族の人たちが追い込まれた地域です。
'94年の大量虐殺は何の前触れもなしに突然起こったのではなく、
その何年も前からこういう地域を中心に
小規模な虐殺が繰り返されていました。
その度ごとに、教会は住民をかくまうシェルターのような役割を果たしてきたのですが
'94年のジェノサイドでは、逆にそうした教会が襲撃のターゲットとなってしまいました。

最低限の日用品を持って逃げ込んできた人々であふれかえる教会に
容赦なく投げ込まれる手榴弾。
押し入ってくる殺人鬼と化した人々。
振り下ろされる鉈(なた)、鍬(くわ)。

ニャマタの教会で話してくれた青年は、当時まだ小さな少年でした。
ここは、いっきに押し寄せてきた民兵によって
1万1千人が殺され血の海となった場所。
その中で生き延びたのはわずか7人。
彼はそのひとりでした。
その小さな瞳がここで見たことや、
彼がどうやって生き延びたか、という話は、
ここには書きません。
おびただしい数の被害者の衣服も、
もはや誰のものかわからない、ずらりと並ぶ大量の骨も、
壁に残る血痕も、
天井に星のようにあいた銃痕も、
なんだか現実のものとは思えず、ただ呆然と眺めるだけでした。
でも、あるものを見たとき、
ここで起きたことが急激にリアリティを持ってわたしに迫ってきました。

ボールペン、魔法瓶、サンダル、ノート、たらい・・・
教会に逃げてきた人たちがここへ持ち込んでいた日用雑貨です。

たぶん日本から来てすぐにこれを見たとしたら
「“昔の”日用品がほこりをかぶって並んでいる」ようにしか見えなかったでしょう。
でも、ルワンダに住んでいるから気づいたのです。
それらの日用品が
ルワンダでの“今”のわたしの生活の中に溶け込んでいるものと同じであることに。

どういうことかと言うと、
ルワンダのように自国に産業がない国は、ほとんどの雑貨を輸入に頼るしかなく、
そのような国に入ってくる商品というのは、
とにかく安っぽくて、デザインのバリエーションに乏しいのが特徴です。
国じゅう、どこに行っても同じ製品ばかり。

教会にころがっていたボールペンは、わたしが職場で使っているのと同じもの。
魔法瓶も、行きつけのお店でおばちゃんがミルクティを注いでくれるのと同じもの。
サンダルも、わたしがお風呂場で使っているのと同じもの・・・。
決して“昔の”日用品なんかじゃない、今もここのみんなが使っているもの。

だから、ほこりをかぶったその日用品を見たとき、
ジェノサイドは、つい先日起きたばかりの生々しい現実なんだということ、
もはやわたしにとって外国人ではなくなったルワンダの人々が
ここで心底恐ろしい思いをし、泣き叫び、血を流したのだということ、
そういったことが、はっきりと、肉感をもって伝わってきたのです。

出口で、記帳と寄付を求められ、感想を聞かれたものの
何を言えばいいのか、むしろ何を思えばいいのかさえわからず、
ありきたりな言葉をひとつふたつ残し、
麻痺したような頭をかかえて帰路に着きました。

4 件のコメント:

  1. 言葉が出てこないです。
    でも、心にずしんと重みがあります。
    こうやって現実を知って生きていくことは、大切だけど、やはり心が痛いですね。
    この痛みを知ることも大切なんですよね・・(>_<)


    あ☆
    昨日、例のブツをママ様にお渡ししてきました!

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  2. 過去の事実としっかり向き合ってよりよい国へ…と日々一生懸命生きてる人々と一緒になっていろんなことを見て、感じているkiri、kiriの心もものすごく成長して行ってるんだろうね。尊敬しちゃうよ。

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  3. この前タウンの文房具やさんの女性がルワンダの人だったよ。ウガンダ人と結婚したみたいだけど、もうルワンダでは暮らさないっていっていた・・・。来月はルワンダに遊びにいくみたいだけど。キガリ出身なんだって。2回目に会っただけだからあんまり深く話せなかったけど、ジェノサイドのこと、まだ消化できてないんだろうなと思う。

    もうここに来て9ヶ月になるね。
    自分の中で、気付かないけども、いろいろ変わって来ているんだろーなーと思う。
    キリちゃんが彼らの日常品をみて気付いたことがあるように。

    鶏はね、メイズのくずが主食。副食がゴミあさりとパンとかご飯ののこりや、米の石取りの時に米をあげたりしてるよ。
    とにかく満腹をしらぬ奴らだね(笑)

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  4. >たけちゃん
    ルワンダ人はほとんどもう自分と同じ国籍のひと、っていう感覚なので、
    もうジェノサイド関係の映画はまともに見れる気がしないし、
    この手の施設も避けてたんだけど、
    今回思い切って向き合ってみて、よかったな、と思ってます。
    器具の注文、ほんとにありがとね。
    助かりました。

    >司
    仕事のほうはちっとも進んでないんだけどね。笑
    でもまぁ焦らず、今ここでしかできないことを大事にしていこうという方針に切り替えました。
    ニジェールの歴史については何も知らないわたしですが
    こないだクーデターあったばっかりだし、
    そちらでもいろいろと感じることがあるんだろうなと思う。
    貴重な経験だよね。

    >コビー
    9ヶ月・・・あまりに早すぎてひっくり返りそうだわ。
    人の性格や考え方はそう簡単には変わらないかもしれないけど
    日本では遭遇し得ないできごとに出会うたびに
    心の中で何かが生まれたり、形を変えたりしている気がする。
    ジェノサイドサバイバーの人たちは、やっぱり4月が来るたびに
    トラウマやなんかで普通ではいられない状態になり、
    国全体が開店休業状態になってしまうらしい。
    (だからそれに合わせて休暇をとる隊員も多し)
    日本のわたしたちは、戦争なんて遠い昔の歴史上のできごとだし、
    この先もたぶんそんなこと体験せずにすむはず、と思っているけど
    やっぱりそれは違うんだ、ということを実感するよね。
    ニワトリ、ようやく卵産んだよ。
    近いうち、写真アップします。
    メイズのくずはどうやって入手してるの?

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